古い建物に新しい命を吹きこんでいく。
それが「すみだの住みか」です。
- 角田さんは画家でありながら不動産屋さん。そして「すみだの住みか」のリーダーです。このサイトをつくった理由をお願いします。
実家が不動産業を営んでいまして、私自身もそこで不動産の仕事をしています。大学で美術を勉強していたこともあり、アート活動や絵画教室、アートペイントやディスプレイといった内装の仕事もしています。
前職で骨董店の店長をしていて、古い物件をリノベーションして住むことに興味がありました。
- 東京でも東側、いわゆる下町には、山の手より古い建物が多いですね。
すみだは歴史から見ても「ものづくり」に選ばれた場所です。江戸時代、隅田川や運河の水利を活かして、瓦・染色・材木・鋳物などの産業が発達しました。明治以降は、皮革、莫大小、紡績、車輛、ゴム、石鹸、麦酒、印刷等、生活用品をつくる工場が数多く建てられました。そのものづくりの基盤が現在まで続いているとても魅力的な街です。残念なことに年々製造業の数は減ってきてますけれど、工場や倉庫など、ものづくりに適した味わいのある建物がより多く遺っています。そんな建物や町並みや人の繋がりを残していきたいと思い「すみだの住みか」を地域のクリエイターと立ちあげました。
- このウラダナという空間は、角田さんがリノベーションしたということですが。
ここは築約90年の物件なのですが、最初にこの物件と出会ったときは、床は腐食し、壁はベニヤで覆われていて真っ暗な廃墟という印象でした。でも元庭だったところの沓脱ぎ石や土間の雰囲気、格子建具の状態が良く、手を入れたらきっと良くなると確信しました。古い建物のリノベーションをしている先輩に改装をお願いし、一緒に壁を塗ったりしました。全く新しいものにするというよりは、もとあった素敵なものを活かして再生するという感覚でした。
古物件リノベーションは楽しい、
ということを伝えていきたい。
地震等の影響で耐震が心配ではありますが、墨田区には耐震補強に対しての補助金等もあります。地元の工務店さんに相談すれば知識も豊富でとても頼りになりますし、家族や友人と一緒にセルフリノベーションするのもリーズナブルなうえ、家に愛着が沸きます。
すみだには道が狭い等、規制によって建てかえたくてもできない物件も多くあり、そういう空き物件を借り手がリノベーションすることで貸し出しできるよう大家さんにも働きかけていきたいと思っています。
何足もわらじを履きたくなる、
それがこのまちの面白さ。
- 角田さんは地域での活動もいろいろやっていますね。忙しそうだけど、楽しそう。
年に2回牛嶋神社で開かれる手づくり市「すみだ川ものコト市」、まちのあちこちでライブイベントなど音楽活動を広げる「TOPPING EAST」、デザイナーたちが集まる「すみだクリエイターズクラブ」、いろいろなイベントやプロジェクトに携わっています。
このまちは、自主的に何かのグループを立ち上げて実現してしまう人がすごく多いんです。誰かが何かをやっていると、まわりの人がさっと協力していく土壌というか、空気感があります。部活動みたいなサークルみたいなのが多くて、人をつなげるコミュニティカフェ等もたくさんあるのが魅力ですね。
物件をご紹介して移り住んできた方も、ウエルカムな雰囲気があって、どんどん知り合いがふえていくのがうれしいと言っています。
- どんな方に「すみだの住みか」サイトを見ていただきたいですか?
街にはものづくりのご相談ができる方々が沢山いらっしゃいます。ものをつくるアトリエ、工場のそばに住む等、ものづくりをしたい方のニーズに応えていきたいです。また、古い物件でカフェやレストランを開きたいとか、古民家や古いマンションを借りてリノベーションして暮らしたいという方にも見ていただきたいです。物件情報をクリエイティブな素材として、イメージがふくらむようなサイトになればと思っています。
角田晴美
墨田区緑生まれ。宅地建物取引士。ペインター。街や人の特色を生かしたまちづくりに興味を持ち、空き工場や倉庫を紹介する「ものづくりの為の空き物件ツアー」を開催。2012年より「すみだ川アートプロジェクト」や「39アートin向島」などのアートイベントに参加。墨田区牛嶋神社で開催される手作り市「すみだ川ものコト市」二代目代表、実行委員長を務める。日常生活を楽しく心豊かなものにすることをテーマに日々活動中。